2021.09.16

外注先への報酬の支払について、給与であるとして否認された事案について

(概要)
A社は、従前社会保険に加入せず、給与を額面から源泉所得税を控除した金額で支払っていたが、
社会保険に加入する事になり、各従業員に給与から天引きする旨の説明を行った。
しかし、一部の従業員から「手取り額が減少するのは困るので、外注先として扱って欲しい」
との申し出があり当該人員に対しては外注費として報酬を支払っていた。

(税務調査)
上記の件について、A社が当該人員に支払った報酬を課税仕入れとして、
これに係る消費税を仕入税額控除税額に計上して消費税の申告を行っていたところ、
税務調査により当該報酬の支払は「給与」に該当し、消費税の課税仕入れに該当せず、
源泉所得税の徴収も必要であるとされた。

(地裁の判断)令和3年判決
「給与等」への該当性については、S56の最高裁判決が判断基準として定着しているが、
本件において、地裁は消費税法基本通達1-1-1も「給与等」への該当性の判断の参考になる基準とした。
通達1-1-1では、個人事業者と給与所得者の区分について、雇用契約の有無で判断すべきとしつつ、
契約の有無が明らかでない場合には以下の4項目を総合勘案して判定するとされている。

 ①その契約に係る役務提供が他人の代替を容れるかどうか➡再外注できるか
 ②役務提供にあたり事業者の指揮監督を受けるかどうか➡独立しているか
 ③未引渡の完成品が滅失した場合等においても、当該個人が提供した役務に対する対価を請求できるか
 ➡目的物の引渡しではなく労働対価に支払われているか
 ④材料や用具を支給されているか

当該事案について上記の4項目に当てはめた事実認定の結果、当該人員に支払われてる報酬については
「A社から空間的、時間的な拘束を受け、
継続的ないし断続的にされる労務又は役務の提供の対価として支給されたものであり、
雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付というべきである」
とし「給与等」に該当すると指摘。税務署の判断は適法であると判断されました。

(総評)税務調査で給与と認定された場合、消費税と源泉所得税が追徴される事になり、
多額の納税が発生する可能性があります。
上記の判決を含めて、外注費か給与かの判定は、具体的な要件がある程度示されておりますので、
どうしても外注費として支払う必要がある場合には、
各種項目に当て込みをして要件を満たす必要があると思われます。
例えば、報酬の受取人は社会保険に加入していない。雇用契約を締結していない。などの表面的な事実や、
○○工業などの屋号をあげて請求書を発行してもらっているなどの、書類のみの対応だけでは、
対策としては不十分であり、従業員とは明確に区分した取扱いが必要になると思われます。