2023.04.21

空き家譲渡特例の適用対象の拡充

令和4年分の所得税確定申告が終わりましたが、この度複数人の納税者の方について、空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例を適用しました。
相続が起こると被相続人の居住用の建物の処分は、相続人にとって大きな問題となります。
そこで税を優遇することで、人口減少によるさらなる空き家問題の対策の一環として施行された特例です。

空き家となっている被相続人の居住用建物を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その空き家及び敷地等を相続人が譲渡した場合、
譲渡所得の金額から最大3,000万円控除することができるというのが、この特例の内容です。

しかし、適用するにあたり、その空き家が一定の耐震基準を満たさなくてはならず、満たさない場合は取り壊して更地の状態で譲渡しなくてはなりませんでした。
つまり相続人が耐震基準に見合うような工事を施すか、取り壊すかという選択を迫られ、もちろん金銭的な負担を負うこととなっていました。
そこで令和5年度税制改正により、その空き家を相続人から譲り受けた者、つまり譲渡後に買主側が一定期間内に耐震基準等に適合させるか、取り壊しを行えば、
この特例が適用できることとなりました。

譲渡してから買主側が取り壊しても適用可能となることで、売却価額の差はあったとしても、負担感はかなり軽減されるのではないかと思います。

ただ、相続人が3人以上であれば特別控除額の上限が3,000万円から2,000万円になるようです。
相続人3人共有で相続し譲渡した場合最大で9,000万円の特別控除が受けれていましたが、それが6,000万円に引き下げられます。

他方で「空家対策特別措置法」が改正され管理が不十分な物件を新たに「管理不全空き家」と規定し改善の行政指導に従わなければ、ペナルティーとして、住宅としての固定資産税の優遇措置を解除するなどの取り組みが始まります。
遅々として進まない空き家対策。不動産価格も上昇している昨今、要件拡充はさておき特別控除額が縮小するのは趣旨に反しているように思うのですが。