2016.11.01

遺産分割協議が整わない場合のデメリット

相続が発生すればその遺産について、だれが相続するかを協議することになります。それを遺産分割協議といいます。相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日から10ヵ月以内です。そのわずか10ヵ月という期間内に諸手続きを行いながら、遺産分割協議をとりまとめ、相続税の申告かつ納税を行わなければなりません。
では、その協議がうまくまとまらない場合はどうするのでしょうか?
各相続人は法定相続分に従って、その遺産を取得したものとみなして、相続税の申告と納税をいったん行います。遺産の全部、または一部でも分割できていない状態のことを未分割といいます。
未分割である場合、相続税申告においては以下のようなデメリットがあります。

 
①配偶者の税額軽減が受けられない
 配偶者であれば法定相続分か、1億6千万円のいずれか多い金額の財産までは相続税がかかりませんが、未分割の場合はその軽減が受けられません。


②小規模宅地等の特例が受けられない
 小規模の特例とは、遺産のうち居住用や事業用として活用されている土地について、一定のものについては評価額の50%又は80%(面積制限あり)減額できるというものですが、未分割の場合は適用できません。

③農地等の納税猶予が受けられない
 農業相続人が相続した農地等が一定の要件に該当する場合、その価格のうち一定の価格については相続税を猶予されますがその農地が未分割の場合は適用できません。


④非上場株式等についての納税猶予が受けられない
 取引相場のない株式を、後継者である相続人が先代経営者である被相続人から相続により取得した場合、一定の要件に該当すれば、その株式に係る一定の価格については、相続税が納税されますが、これも分割されることが要件の一つとなっています。


⑤物納ができない
 相続税の納付については金銭納付が原則となっていますが、金銭で納付することが困難で、かつ延納でも困難である場合は、金銭にかえて相続した財産で納付することができますが、未分割の財産については相続人全員の共通の財産とみなされるため、認められません。
  

ただし、申告書を提出する際に「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出書」を提出しており、3年以内に分割協議が整えば上記①と②については更正の請求書または修正申告書を提出することで適用を受けることができます。いずれにせよ、分割協議が整うこと、納税資金を確保することが、相続税申告において最も重要なことです。